世界から見た日本の営業事情が一体どうなっているか気にされたことはありますか?
日本と海外の営業体制の違いは、近年かなり目立つようになりました。
読者の皆様は、日本と海外(主に欧米の国々)、どちらがリモートセールスやインサイドセールスが進んでいると思いますか?
多くの方は海外であると思われたのではないでしょうか。正解です。
実は欧米の方が圧倒的にリモートセールスが進んでいます。一体どのように海外では営業体制が変わっていったのか、日本の営業事情と比較しながら解説していきたいと思います。
コロナ禍以前の日本と欧米のリモート事情はどうだった?
このコロナ禍においては誰もがリモートセールスに取り組んでいることと思います。実は海外では、もっと以前からリモートセールスが進められていました。
Hub Spot Japanのデータによると、2019年10月段階、コロナ禍に突入する直前の時期には日本企業の11.6%、つまり10社に1社程度がリモートセールスを何かしらの形で導入していたようです。
一方海外は、アメリカでなんと47.2%、ヨーロッパは37.1%という数値でした。
つまり日本は元々、世界に対して遅れをとっていたのです。
リモートセールス分野で日本が海外に遅れをとる3つの理由
リモートセールス分野において日本が海外に遅れを取っていた理由は3つあります。
リモートセールス導入の遅れが、ひいては日本と海外のオンライン営業におけるスキル格差も生んでしまいました。この3つの理由を順番に見て、ご自身の営業経験を振り返っていきましょう。
1.評価制度の違い
まず一つ目は「評価制度の違い」です。
日本は年功序列制度の企業が未だに多いです。
一方アメリカでは、「ジョブ型」という形が選ばれています。
ジョブ型では仕事内容と責任の所在が明確です。したがって、成果に対する報酬が明確となるのです。
営業に関しても同じことがいえます。アメリカにおいて営業職は、プロフェッショナルとして意識高く従事する仕事とされています。
日本では新卒で入社し、営業職・事務職・総合職を選択します。営業職は他の職種と並列関係であり、上層部からどこに配属されるかを決められます。
大学等で営業職について専門的に学び、営業職を目指して企業に入社するということは、日本ではほとんどありません。
私はこの「営業職に対するプロ意識の差」は大きな違いであり、日本と海外に差が生じた理由のひとつであると捉えております。
2.間接コストの割合
ふたつ目は「間接コストの割合」なのですが、これは海外でリモートセールスが普及した理由に関連しています。
アメリカではリモートセールスが広まった明確なタイミングがあります。
それは2008年、リーマンショックに伴うものです。
リモートセールスが普及した理由は「コスト削減のため」です。皆さん、日本とアメリカの地図を思い浮かべてみてください。圧倒的にアメリカの方が大きいですね。
国土が広いということは、移動するのにコストがかかるのです。
例えば私は東京に住んでいますが、東京から九州に行く場合、だいたい2時間で行けます。片道2時間で国土の端まで到達できてしまいます。
アメリカではそうはいきません。移動するだけで1日使うこともざらです。
つまりそもそもの「間接コスト」についての比重が大きく異なります。
その状態でリーマンショックが起きてしまったため、アメリカの企業にはさらなる営業の効率化が求められました。ここから一気にリモートセールスが広まったとされています。
効率的な営業方法が研究され続けた結果、多くのサービスが誕生しました。
いま現在日本で流行している、それこそHub Spot Japan、Salesforceなど先進的なインサイドセールス型のサービスが生まれることとなりました。
つまり、アメリカでは間接コストの割合が高かったため、リーマンショックのあおりを受けて爆発的にリモートセールス体制が進められたのです。
ちなみに2017年におけるアメリカのインサイドセールスの市場規模は、約3兆円にも達しています。インサイドセールスの普及移行、市場がずっと伸びているという証左でもあります。
3.営業習慣の問題~売る側と買う側の意識差
3つ目の原因は「営業習慣の問題」なのですが、ここでさらに別のデータを参照します。
あるアンケートをもとにした研究では、日本人を対象として「訪問営業とリモート営業、どちらが好ましいか」について聞いた結果が発表されています。2019年12月と2020年12月時点という2つの時期で本アンケートは実施されました。
まず、「買い手」つまりお客様側の回答です。2020年の12月時点では、「リモート営業の方が望ましい」と考える人は38.5%、「訪問型の営業が望ましい」と考える人は35.0%でした。
現在ではリモート営業を望ましく思っている買い手が多いということがわかります。2019年12月時点では逆で、それぞれ20%と50%という訪問営業が望ましいと思う人の方が多いという結果でした。
一方、「売り手」つまりセールスパーソンの場合では相変わらず訪問型営業が望ましく思っている人が多くなっています。
つまり日本のセールス環境を俯瞰すると、「売り手側は訪問型営業がしたい」「買い手側はリモート営業を望んでいる」という大きなギャップがある状態であるとわかります。
売り手であるセールスパーソンが訪問型を望ましいと思う理由は、訪問型営業の方が成約率が高いという体感だったり、訪問しないと誠意が見せられないからということでした。
では買い手側はセールスパーソンのどんなところに誠意を感じるのでしょうか?
あるデータによると、どんな営業担当者が来てくれたら「誠意がある」と思うかというアンケート1位は「できないことを明確に伝えてくれる人」であるとのことでした。全体の約5割がこのように答えています。
対して「足を運んで訪問する人、対面で話す人」に誠意を感じる層は全体のわずか2割程度です。
買い手の2割のみしか対面商談に誠意を感じていないにもかかわらず、売り手側はその倍以上が対面商談で誠意を発揮できると思っている状況です。意識のズレが起きていると言えます。
つまり、営業習慣に問題がある、営業の意識に乖離があるということです。
日本では、靴をすり減らして足を運ぶフィールドセールスが営業手法として長く根付いていました。その習慣の中では、先の段落でも触れた評価制度・間接コストについて特に意識されずとも企業活動が成立してしまっていたのです。
結果、上記アンケートのような買う側-売る側の意識差が生まれてしまいました。
日本の営業生産性は海外と比べて非常に低くなっています。やはり実際に訪問をすることが主体であるため移動コスト(お金・時間)がかかります。
先ほど、東京から国土の端まで2時間で行けるというような話になりましたが、ドア to ドアでは往復5~6時間ぐらいは平気でかかることもざらにあります。
すると、結果的に1日の営業活動自体は移動だけに費やしているといったことが頻発するのです。
私はこの状況を頭ごなしに否定する気はありませんが、日本の企業はこういった現状を再度見直すべき段階に来ているように感じます。
また、世界的に見て日本は営業生産性が低いとも言われています。日本の「営業生産性」が低い理由と要因と改善策についても検討が必要です。