商談の場では「お客様の声」を活用することが大切?
「お客様の声」、つまり事例というものは商談の中で非常に大切です。お客様の声を適切に活用できるかどうかによって、営業の成約率や受注の単価などが大きく変わってきます。
コラム読者の皆さんも、商談の中で「お客様の声を適切に活用すべき」というノウハウを聞いたことがあるのではないでしょうか?そこで今回考えてみたいのが「いったいなぜお客様の声を商談の中で活用すると効果的なのか」ということです。
「お客様の声を効果的に活用することによって、商談の成約率が高まる」というメカニズムを理解していただいた上で、あなたが現在使っている顧客事例をより適切なものにブラッシュアップしていきましょう。
私、小沼自身も社内では「お客様の声をどれだけ自分の脳の中にストックできるかが、成約率を大きく分ける」と伝えています。実際、それぐらい「これまでに頂いた『お客様の声』を、いま目の前にいるお客様に合うように提示できるかどうか」はとても大事です。決して甘く見ないでいきましょう。
「お客様の声」が大切な3つの理由
まず、なぜお客様の声というのが大事なのかという理由を三つお伝えします。
理由1:「共感」を得るため
まず一つ目の理由は「共感を生むため」です。共感を生むための一つの方法として「人にストーリーを聞く」というものがあります。
例えば、あなたは好きな映画、小説はありますか?私は映画が好きでして、つい先日も映画を見に行ってきました。
その好きな映画というものを思い浮かべてみた時に、その物語性とか、登場人物の描写とか、そういったものがなんとなく記憶の中に想起されると思います。これがなぜ起きるかというと、ストーリーになっているからです。
つまり整理すると、完璧に自分たちの商品説明とかサービス説明をされるよりも、「あなたの商品サービスを購入して、お客様がどのように変わっていったのか」という事例を話されたほうが、目の前の見込み客の中には共感が生まれやすいのです。
私たちプロセールス協会もそうでした。例えば、私どものような研修サービスやコンサルティングメニューを販売している立場であれば、営業研修を導入することによって、お客様の「会社の業績」「社内の雰囲気」「社長としての考え方」「これからの事業計画」等がどう変化したのか、についてを商談では話します。
すると、目の前にいる見込み客の方には「私たちもそういう状況だ」と共感が生まれます。共感が生まれる事によって、人は購買行動がしやすくなります。
一方で、単なる商品説明とかサービスの説明だけでは共感が生まれません。「私のこの研修サービスは、こういう内容でございます」と言ったとしても、なかなか共感する場面は想像できませんよね。
しかし、相手にとっての近しい事例を話すことによって、共感が生まれます。そして、こちらに対して「それ、私たちもそうなんです」とか「確かに、うちの会社もそういう状況に陥ってまして」と言ってくださるようになります。そして共感によって、購買の確率が高まる。これが一つ目の理由でした。
理由2:顧客の「自分ごと化」を促すため
二つ目の理由が「自分ごと化が促進できる」から、です。
商品・サービスを購買していただくためには、お客様の心理を「自分ごと」へと誘導することが非常に大切です。
例えば、あなたがダイエットプログラムを販売しているとしましょう。目の前にダイエットを希望されるお客様がいた場合、「確かに私もそんな問題を抱えている」と、より強烈に自分ごと化していただく必要がありますよね。
ダイエットを自分ごと化してもらうのであれば、以下のようなトークスクリプトが有効です。
「実は私どものお客様の事例で、肥満で悩んでる方がおられました。ダイエットを繰り返し繰り返し行っても、なかなかうまくいかない。つまりダイエットの繰り返しをしてもリバウンドしてしまう。食事制限とか運動とかいろんなことを試してみたけど、ダイエット自体を繰り返せば繰り返すほどリバウンドを繰り返してしまうのです」
「そのお客様が私どものプログラムを受けられてからは、全くリバウンドがなく、むしろ無理なく痩せられるているのです」
ダイエット・リバウンドを繰り返している人であれば上記の内容は「自分ごと」になります。「あ、それ私も抱えている問題だ」と受け止められるのです。この自分ごと化が起これば、お客様は自分の問題として商品・サービスの購入を捉えてくれるようになるため、圧倒的に成約率が高まります。
先ほどの共感と少し似ているかもしれませんが、ポイントは「『自社の商品・サービスが解決できる問題』、および『自社の商品・サービスが叶えられる理想の状態』を自分ごと化してもらう」ということです。
今回のダイエットのように、「こういう問題がまずいのか」という内容を自分ごと化してもらうには、事例を話す以外のことでは成し遂げづらいものです。
他のケースとして、カーディーラーを例に挙げます。
車の販売をする際、小さなお子様がいる家族連れが訪れると「車内はとても幅広く、お子様が動き回って仮に車体が揺れたとしても車をぶつける心配がないセーフティを備えています」とか、「車内はとても柔らかい素材でできているため、お子様が転んだとしても傷つけることはありません」、または上記のような点が評判である、とお話します。
すると家庭をもったお客様のなかで「確かに今の車はちょっと旧式で、結構車内の皮が固くて子どもがぶつかる、頭をぶつけると泣いてしまうこともある」といった課題を抱える方は、自分ごと化できるようになります。
このように「自分ごと化」が二つ目のポイントでした。
理由3:社内全体の営業力が高められるから
顧客事例を活用すべき三つ目の理由は「社内全体の営業力が高まるため」です。
ここまでの解説で、お客様の事例を話すことによって成約率が高まる理論についてはなんとなくご理解いただけたのではないかと思います。
最重要なことは、一人一人の営業マンがただ顧客事例の活用をなぞるだけではなく、社内全体でお客様の事例を共有できるような仕組みを作っておくと、圧倒的に成約率が高まるということです。
一人一人の営業マンが成約率を高めることは確かに大事です。しかしこれを会社全体、部署全体で共有することによって部署全体のナレッジが高まるのです。お客様に提供できる事例のレパートリーがどんどん増える状態がイメージできますよね。
そのため、小沼が普段からおすすめしていることは、一人一人が頭の中に事例を入れるのではなく、「PDFのような媒体であらかじめ共有しておく」「データとしてしっかりとお客様の事例をストーリーとして記録しておく」ということです。
中には2~3行でお客様の声を集め、「こんなに多くの企業から支持されています」と伝える向きもありますが、商談の中ではあまり有効に機能しないといえます。なぜならば「ストーリー」ではないからです。
ストーリーが見えないということは、「お客様の『導入前後』はどうだったのか?お客様の『アフター』はどう変化したのか?」が明確になっていないということです。お客様にストーリーの言語化をすることで、自分たちが利用できる事例がどんどん構築できます。
上記でご紹介したような角度から事例を構成することをこれから意識していただければ、成約率につながるといえます。
また、会社全体の営業生産性向上については『世界から見た日本の「営業生産性」が低い理由と改善策』の記事を参考にしてみてください。