今回は、「大型商談はこの流れが鉄板!SPIN営業術を脳科学的に解説」というテーマでお届けします。法人営業、特にBtoBを主体とされている方に役立つ内容となっているため、特に目を通していただきたく思っています。
SPIN営業術とは
テーマにあるように「SPIN営業術」というノウハウが存在します。
SPIN営業術は、1988年にイギリスのニール・ラッカム氏が発表した営業ノウハウです。
誕生から30年ほど経った今でもBtoB営業における基盤となる考え方です。
私、小沼自身も実は法人営業の際にこの考え方を取り入れております。
今回は、ただ単にこのSPIN営業術を解説するだけでなく、脳科学的、心理学的な観点から活用方法について解説していきたいと思います。
ぜひ今後、ご自身の商談に活かしてみてください。
SPIN営業術は4つの質問から成り立つ
SPIN営業術は、「4つの質問」から成り立っています。
一つ目の質問が「Situation」、状況を質問するもので状況質問と呼ばれます。
二つ目は「Problem」、問題質問といいます。
三つ目は「Implication」、示唆質問。
四つ目が「Needpayoff」、解決質問です。
この四つのアルファベットから頭文字を取ってSPIN営業術と呼ばれています。
今回のSPIN営業においても重要となってくる「質問」ですが、、別の記事においても、質問力向上のポイントと質問テンプレートについてまとめているので、ぜひご参考にしてみてください。
・「営業パーソンが知っておきたい質問力を高める1つのポイント」
・「成約率を高めるためには質問が重要!4つの質問テンプレートで質問力を高めよう」
状況質問(Situation)
まず、セールスパーソンであるあなたが商談で初めてお客様と話をする際にやらなければいけないことがSPIN営業術ひとつ目の状況質問です。
お客様の状況を理解しないことには最適なサービスの提案ができません。適当な自分の商品・サービスの話をするだけでは、お客様の立場に立つことはできません。
例えば「御社の現場はどのようになっていますか」「一体どういう業務フローが成り立っていますか」「現在の成約率はどうですか」「商談の実際の数はいかほどですか」等、お客様の状況を把握するためのヒアリングです。
状況質問では共感が大事
脳科学的に説明しますと、状況質問の段階では共感することが大切です。
人間にはミラーニューロンという共感細胞があり、相手に共感する力が備わっています。ミラーニューロンはイタリアのパルマ大学に所属していたジャコモ・リゾラッティ氏により発見されたと言われています。
真剣に相手の状況を理解しようと努めることで、この共感細胞が働き、相手はあなたに対して胸襟を開いてくれます。自分のことを理解しようとしてくれているあなた自身の感情を感じ取ってくれるのです。
つまり、ラポールが形成された状態となります。
したがって状況質問で大事なことは単なる状況についての質問だけではなく、相手に寄り添った姿勢、相手のために伴走をしていく姿勢を真摯に伝え、共感を得ることです。
いきなりの商品説明、角度の鋭い質問には相手は共感してくれません。ミラーニューロンが働かないからです。
共感を生み出すメカニズムについて、脳科学の観点から「なぜあの人の話は人を動かすのか?共感を生む脳のメカニズムとは」の記事に記載しています。ぜひご参考資料としてご覧ください。
問題質問(Problem)
SPIN営業術2つ目の問題質問とは、そのまま「問題があると思った点について質問すること」です。
この段階で、話題をあなたの会社のサービス・商品と結びつけましょう。
私自身も一般社団法人プロセールス協会を運営しております。名前の通り「セールスを支援する」団体です。
それなのに問題質問のステップにおいて、例えばそこまでセールス(自社商品)と関係ない「人事評価」や「採用」について私が投げかけてしまったら意味がありません。
問題質問では「自分たちの商品・サービスと関わりのある問題を特定する」ことが大切になります。
問題質問では「自分ごと化」が最終目標
次のステップに上手くつなげるためにも、問題質問の段階では「相手から自分たちの商品サービスに関わるような問題を引き出す」こと、つまり「自分ごと化」が必要になります。
例えば質問としては「経営がうまくいってない理由はどんな部分にあるでしょうか」「現在、御社の目標を妨げている弊害はどのようなことだと思いますか」という内容となります。
結局、人間の脳のメカニズムは「他人ごとの問題」を解決しようとはしないものです。そのため、いかに自分の問題であるか、自分ごと化させるかが重要となります。
「自分ごと化」させるためには、「その人自身に問題がある」と自覚させなければいけません。
そのために「どんなところが問題ですか」と伺って、相手に「そうか、私たちはこういうところが問題だから、うまくいっていないのだ」と実感してもらいましょう。
示唆質問(Implication)
SPIN営業術の三つ目は示唆質問です。
相手が抱えている前提条件を指摘するという方法です。
つまり、相手が抱える問題を解決するために、「本来はこのような取り組みを行うべきではないでしょうか?」「できるだけ早く○○をやるべきと思いますがいかがでしょうか」と問題点を指摘し、その問題を解決するためにはこのような取り組みが本来あるべきなのではないかと示唆するという質問の仕方です。
一方で、お客様が抱えている問題点(前提条件)について見抜くことはなかなか難しいのではないかと思われます。お客様の問題点を見抜く方法について、「これが出来ると商談が変わる!セールスアブダクションで見込客の心理を見抜く方法」の記事にまとめていますので、こちらの記事もご確認してみてください。
示唆質問の提示により、相手にアハ体験を喚起することができます。
脳科学的に説明しますと、「問題はAという部分にあると思い込んでいたが、実際にはB部分に問題があった」と発覚するといった例が挙げられます。
セールスの場面でいえば、あるクライアントが集客に問題があると思っていたものの、そもそもセールスの最終ステップにおける成約率が低いという問題を抱えていた場合、成約率を高めないことにはいくら集客に励んでも無駄になってしまうことでしょう。
その場合、「御社はまず集客を念頭に置くのではなく、まずはセールスでしっかりと確度の高い仕組みを作っていく取り組みを行うべきじゃないでしょうか?」と示唆することが必要になります。
示唆により相手の思い込みをなくしてあげて、アハ体験を起こしています。
人間の行動は、あらゆる前提に支配されています。そのため前提を指摘し、自覚していただくという段階が非常に大事なのです。
的確に問題およびその問題が発生する前提条件を把握して、相手に指摘をすることをぜひ心がけてください。SPIN営業術でもかなり重要な部分です。
解決質問(Needpayoff)
そして最後の質問が解決質問です。
解決とはテストクロージングの段階です。
つまり「私どもの商品・サービスを活用できれば、指摘させて頂いた問題解決につながると思われますがいかがでしょうか」「○○様は、今回提示させていただいた取り組みを行うべきだとお考えいただけますか」といった形になります。
言い換えれば、これまで「自分が持つ商品・サービスの前提をしっかりと用意し、その部分とリンクするように相手の抱える問題を指摘する」という行動を取ってきました。
そのため「興味がある」あるいは問題を解決するイメージを持っていただき、商品・サービスに対して「Yes=合意」をもらうことがポイントとなります。
するといよいよ、商品・サービスの説明ができるようになります。
今回のSPIN営業においても非常に重要な役割である「テストクロージング」ですが、「テストクロージング」の具体的な方法については、「成約率が劇的に変わる!テストクロージングの具体的な実践方法」の記事にまとめています。お時間のある時にご覧ください。
解決質問に活用できる「認知的不協和」
人間の脳には認知的不協和というメカニズムがあり、解決質問に深く関わっています。
認知的不協和とは、「自分が『YES』と言ったことに対して、後から否定しにくくなる」というメカニズムです。先ほど解決質問では合意を得る=Yesを引き出すことをポイントとしてお伝えしました。
例えば「興味がありますか」と聞かれて、「ある」と答えたことに対し、後から翻して「興味がありません」とは言いにくいのです。
その理由は「自分の言葉」であるためです。自分で自分を「洗脳」している状態になります。
洗脳と表現してしまうとネガティブなイメージがありますが、人間にとってもっとも強力な学習方法は「自己洗脳」であると私は思っています。
「アファメーション」や「インカンテーション」など自己啓発も同様です。
私達の身近な例ですと、会社の理念・ビジョンを唱和するといった行為も該当します。自分の言葉を使って、自己洗脳をおこなっています。
上記を踏まえて、認知的不協和について考えます。
自分が一回Yesと言ったことに対しては、Noと言いにくいとわかりました。
つまり「興味がありますか」という質問に対してYesが得られれば、話が聞いてもらいやすくなります。
自分の商品・サービスのどこかに興味を持ってもらえる可能性が芽生えたならば、あるいは商品・サービス活用後に望ましい状態が手に入るといったイメージを持ってもらえたのであれば、解決質問の段階ではしっかりとしたテストクロージングを行っていきましょう。
解決質問の段階でのテストクロージング時に、商品・サービスに対してお断りされるケースもあると思います。その際の対応方法についても、「『お断り』をされた際に切り返すための鉄板トーク」の記事に記載していますので、ぜひご参考にしてみてください。
大型商談では特にSPIN営業術を意識しよう
今回はSPIN営業術について解説しました。
大型商談の場合、SPIN営業術は特に意識していただきたいと思っております。
法人営業の場合、1回の商談では決まらない事も多々あると思います。
むしろ何度も商談の場を設けることが多いため、二回三回と商談を積み重ねていきながら、プロセスを進める必要があります。
そのため、大型商談では1回の話し合いの中でSPIN営業術をすべて実現してしまおうとは決して思わないでください。
適宜タイミングを見ながら、まずは状況質問が必要だから今回はヒアリングに徹しよう、2回目のアポイントではヒアリングした内容をもとに相手側の問題点を指摘しよう、3回目ではその問題点を解決するための具体的なプログラム、商品・サービスの説明をする……というように進められれば理想的です。
SPIN営業術に基づいて商談を進めれば、比較的スムーズな進行が得られるかと思いますので、是非SPIN営業術を身につけ、実践することであなたのご成約につなげてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。今回はBtoBで活用できるSPIN営業について記載いたしましたが、法人営業と個人営業の違いについては「法人営業と個人営業の決定的な違いとは」の記事に記載していますので、お時間のある時にご参考にされてみてください。