今回のコラムは、「お客様からYESをもらうと成約できる、本当の理由」というテーマでセールスの基礎知識について解説いたします。是非、今回の内容もあなたの営業活動に活かしていただければと思っております。
お客様から「YES」を引き出すと成約につながる?
皆さんは、セールスの現場で「お客様からYESをもらうことがとても大事だ」と聞いたことがあるでしょうか?
きっと、多くのセールスパーソンは聞いたことがあると思います。
この手法は「YESセット話法」とも言われます。お客様からの「YES」となる言葉を獲得していくことで、最終的に成約というYESを得られる、というものです。
しかし、実はこのYESセット話法および「YESをもらうことが重要」という考え方に共通する「YESをもらうことが大事な理由」については明確にされないことが多いのです。
そこで今回は、心理学的な観点から「YESをもらうことがなぜ成約につながるのか」
について解説したいと思います。
そして「実はYESをもらっても成約ができないパターンがある」ということについても合わせてお伝えします。
YESをもらうことが成約につながる理由とは?
それでは「YESをもらうことがなぜ成約につながるのか」について考えてみましょう。
その前に、今回あなたに覚えていただきたい「認知的不協和」というメカニズムがあります。本コラムでは、ビジネスにおける認知的不協和にフォーカスしてお伝えします。詳しく知りたい方は、Googleで検索するとさまざまな定義があるとわかりますので、そちらをご参照ください。
私、小沼はこの「認知的不協和をセールスに活用する」ことを提唱しています。セールスにおける認知的不協和とは「お客様は、一回自分がYESと言ったことを否定しづらい」ということ。
自分が既に出したYESを否定しようとするとまさに「不協和」が働き、自分の中に違和感が生じます。セールスにおける認知的不協和とはこのようなメカニズムです。
一回お客様から頂いたYESがご自身で否定しにくいのであれば、連続してYESを獲得していくと最終的にお客様は全体を否定しにくくなります。
自分が言ってきたことを否定しにくいということは、最終的な「成約」についてもYESを得やすいということになります。まさにYESを取るべき理由がここにあります。
例えば「○○さん、△△に興味はございますか?」と聞かれて「はい、興味はあります」と答えたお客様にとって、以後「△△に全く興味はない」という否定の仕方はしづらくなります。否定してしまうと、理論的には矛盾してしまうためです。
この「矛盾」を人間の脳は嫌うのです。ということは認知的不協和のメカニズムがあるからこそ、YESを連続させる、積み重ねることに意味があるということになります。
認知的不協和のメカニズムを理解して質問を重ねていけば、成約率に大きく影響してきます。
成約率を高めるための具体的な質問については、『成約率を高めるためには質問が重要!4つの質問テンプレートで質問力を高めよう』を参考にして、質問力を高めてみてください。
しかし今回押さえておきたいのは「どんなYESにも意味があるというわけではない」ということです。意味があるYESを積み重ねなければいけない、ということを今回のコラムにて覚えていただければ嬉しく思います。
「意味があるYES」と「意味がないYES」の違い
「意味があるYES」と「意味がないYES」には一体どういう違いがあるのかを解説します。
意味があるYESを獲得していくと、お客様は成約に向かって前進していくわけですから、とても効果的な商談となります。
一方で、意味がない/弱いYESを獲得していても、なかなか成約にはつながりません。例えば以下のような会話です。
セールスパーソン「〇〇さん、今日はご来店ありがとうございます。今日はいいお天気ですね」
客「そうですね」
セールスパーソン「〇〇さん、今日はとても暖かいですね」
客「そうですね」
セールスパーソン「〇〇さん、ところでお腹がすきましたか?」
客「はい、すきました」
客からは確かに毎回YESが取れていますが、上記の会話にはセールス的な観点から見て、全く意味がありません。意味がないYESとはこのようなものです。
商談に大事なこととは「以降のビジネスでも活用できるような情報が得られるかどうか」です。つまり「商談の中で活用できる情報」を得るためのYESには意味があるのです。
意味のあるYESを引き出せる会話とは、以下のような形です。
セールスパーソン「〇〇さん、当社の商品のこのようなことがお気に召していただいたというふうにお伺いしていますけれども、そのような理解でよろしかったでしょうか?」
客「そうですね。確かに私は御社の商品のこういうところが良いと思います」
上記の会話におけるYES(=「そうですね~」以下の客からの発話)が重要である理由は、「『〇〇という客は、この商品について、この点がいいと思っている』という情報が得られるから」です。まさに以降の商談に役立つデータが得られた形です。そして「現行の商談に大きく関係する情報」となるYESでもあるため、より理想的な内容です。
「意味があるYES」を重ねて、成約を勝ち取ろう!
お客様に「YES」と言っていただくことが良い理由についてお話しました。
認知的不協和のメカニズムが働くことで、あなた自身が相手のYESを取って行けば行くほど、お客様自身がそのYESを否定しにくくなるというメカニズムが得られるためです。
ただし、得るべきYESにも実は種類がありました。意味のあるYESなのか、意味のない・意味が乏しいYESなのか、です。
意味があるYESとは、商談の中で活用できるようなデータ・情報が得られる「合意形成」のことです。
「天気がいいですね」とか「お腹が空きましたね」など、商談の本筋とは関係ない質問にYESをもらってもあまり意味がありません。YESセット話法も、活用する上での使い分けが肝心です。
もちろん、アイスブレイクの時にあなたの人となりを知っていただくという意味で、世間話やラポールを築き、一つの共通点を探るためのYESは必要です。
オンラインでのラポールの築き方については、セールスとリアルでの営業との違いについては、『オンラインコミュニケーション上でラポールを築く3つの要素』の記事を参考にしてみてください。
今回のコラムは、あくまでも「商談」の中におけるYESのとり方、およびYESを取るべき本当の理由ということについての解説に該当します。ぜひ、あなたのビジネスライフにおける必要な場合に応じてうまく活用できるように、私どものコラムを参考にしてみてください。